夜中の波止場
そこは
先の大戦で南海に散り沈んだ戦艦の甲板を模った
時を跨ぐ真空の処(ば)
海風が潮と船舶燃料の匂いを運ぶ中
絶望を辛うじて乗り越えた私は
女の膝に身体を預けた
暖かく淡く永遠の灯りが胸に点る
その灯りは松果体にまで上昇し
夜なのに金色で景色を染める
その瞬間名前が消えていた
ただ私は男であり
彼女は単に女であった
それぞれのジェンダーの代表として向かい合っていた
宇宙で我らしか存在しないかのように
風も優しく祝福し旋回していた
一度でもその歓喜に感応したならば
人生は十分だ
なまじ夫婦になるよりも
全ての時間に並行に刻まれし至福と安寧の瞬間(とき)
一万年に一度で足りるかの如くの深遠な息
そんな瞬間(とき)を永遠と呼ぶ
そして
永遠とは今である